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「エスペラント」何処かで聞いたことがある言葉が目について、手にとってみるとサブタイトルに「異端の言語」とある。岩波新書であることの、内容についての安心感もあって、タイトル買いです。エスペラントというのは、19世紀末に発案された人工言語で、「希望する者」というのがその意味。当時、西欧諸国において世界進出が急速に進むなか、母国語が異なる異文化の人間同士で利用される、国際補助語を目的として生まれた。その為、誰にでも簡単に学ぶことができることができる言語になっている、とのこと。

エスペラントの文法は、印象西欧語のシンタックスを採用していますが、名詞、品詞などの単語が極力シンプルにシステマティックに整理されています。例えば名詞はすべて「o」で終わる、形容詞はすべて「a」で終わるなど。動詞の変化も英語のように複雑ではなく、例外のないように取り決められているので、動詞はひとつ憶えれば、活用は自ずと分かるようになっていたり。言語の概要が紹介されていますが、なるほど勉強しやすそうです。

本書は言語自体より、その人工言語(計画言語)が発案された、社会的・文化的背景、また、その普及のあらましに多くの頁が割かれていて、単に言葉を知るというより、その思想を知る手掛かりになっています。世が革命の渦中にある中、どの言語も土台としていないことから、アナーキストに親和性が高かったなど、興味深い歴史も面白い。まだリアルより理想が先立った時代に産み落とされた言語、そう思うと懐かしくも哀しくもあり、複雑な心境になったりする。微妙にだけど。

果たして本書は、このエスペラントが一体何なのか、その概要を知ることができる新書であると思えました。個人的には、宮沢賢治とエスペラントの関係についてのエピソードに心惹かれました。僕はこの人工言語が、実用的な言語というより、その詩情的感覚が気に入っています。

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